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トライアスロン初心者が3か月でアイアンマンマレーシア完走を目指す! 体験記最終④ ランニングパート

④ランニングパート、そして鉄人へと。

来てしまった。

ついに。

ランパート。

ちなみにこの記事はアイアンマンレース体験記最終④ランパートです。

下記リンク3つが①〜③です。

 

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まずはトランジション(ちなみにここのトランジションは室内で冷房完備)。

バイク疲れが残っており、少し長めに使う。

まだタイムはそこまで気にしていなかったので、トイレにこもり少し瞑想。

これは個人的な慣習である。

T2で9分19秒ほど使い、トイレも済ませてトランジションをでる。

終わってから後悔するのだが、ここのトランジションにあったワセリンを使うのを忘れる。

というか日焼け止めの隣に置いてあったワセリンなのだが、ワセリンか何か分からず、

きっと反対で綺麗に日焼けするためのオイルみたいなもので、かっこよく日焼けしてゴールしたい人が使うのかなと、ランカウイの島に居つくサルよりもアホな考えにより使うのをやめたのだ。

まあそんなことは置いておいて。時間をすごくすごく確認したかったが、腕時計を持っていなかったので、アイアンマンのスタッフのおじさんに

「abang pukol berapa sekarang?」

と必死の形相で聞く。するとおじさんが

「pukol empat lima puluh empat 」

とマレー語で返す。しまった。

頭を使いたくない時に、時間なんてマレー語で聞くんじゃなかった。

疲れで瞬間処理能力が追いつかず、すかさずおじさんの腕を取り、時計を確認。

「4時54分」予定よりかなり早い。

自己予測だとおそらく10時間くらいスイムとバイクで使うと思っていたからだ。

レース開始から9時間ほど経過(僕のオレンジスイムグループは8時ごろスタートだった。)

もうここまで来たら当初の目的であった完走を確信した。制限時間の17時間までは8時間ある。たとえ歩いたとしても、

まず時間には間に合う。

ここから脳が切り替わり、意外とタイムも良かったので、順位を狙い始める。

competitionのスイッチをオンにする。

やりきって立てなくなっても最悪這ってでも何とかなる時間があったので、ランで全ての力を出し切ることをここで再び決断。

何よりつくばで3ヶ月支えてくれた人たち、家族、現地まで来てくれた友人を想った時に、ここで余力があるのに全部使い切らないで歩いたらだせえなと思った。

それならたとえ歩くことになったとしても、もう一歩も走れないという状態までは気にしないで突き進もうと。

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ランコースは、スタート地点、T2空港近くのMIECからランカウイ随一の観光スポット、チェナンビーチに佇むホテルMeritasにあるゲートまでを2周半。

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時計のない僕はだいたい片道8km×5セットと考えて走った。時刻に関しては、1周、2周終える時点で、その度スタッフの方にお聞きした。

ランでは2kmごとに、つまり1週約16kmにつき、8個ほどエイドステーションがある。

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これでもかというほどだ。早く走るには、まずは怪我で立ち止まらないことだと思ったから、足がつるのを避けるため、僕は2周半全てのエイドステーションを使った。

だからランだけで20回ほどエイドステーションを利用した。

ランパートのエイドステーションは一番充実していて、

○トイレ

○水浴び

○冷たいスポンジ支給

○水

スポドリ、コーラ

○スイカ、バナナ、チョコ、ジェル

スポドリ、コーラ

○水

○冷たいスポンジ支給

○水浴び

○メディカル

○トイレ

の順に各エイドステーションに、どちらから来た選手にも対応できるよう左右対称でセットしてあるので限りない恩恵を受けることができる。

僕は大好きなスイカが沢山たべれるし、今まで禁じてきたコーラも最後頑張るために飲めるので、本当にランのエイドステーションには感謝しかない。

ただ2kmに一回そんなことをしているもんで、汗排出量を遥かに水分吸収量が上回り、結局42.2kmの間に5回ほどトイレに行ったので、やはり適度な補給をお勧めする。

1周目。

バイクから降りた直後は思うように身体が慣れず、動かなかったが、エイドステーションを重ねるにつれ、また、身体が走る動きに慣れるにつれ意外と動くことに気づく。

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1周目はそんな感じで自分のペースで走る。ゴール地点のチェナンビーチに近づくにつれ、島のテンションが上がってくる。

沿道にはローカルの人から、観光客、バックパッカー、タイのマッサージの人、応援の人、アイアンマンハーフを終えた人たちがずらっと並んでおり、応援してくれる。

ありがたい。ほんとうに。

そしてチェナンビーチで折り返し、ふたたびスタート地点、空港近くMIECの方へ。だんだん空が暗くなってくる。

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ある意味では日射がなくなり走りやすくなる。

2周目。

スイムの後から来てくれた友人にも母にも会っていない。

この長い旅を追って、ジャストで応援するのは本当に難しい。

それでもやっぱり2周目20km(ハーフ)を超えてくると、身体的にも精神的にも限界が近づいてくる。

どこかどこかと探したが、知り合いの姿は空港にもチェナンビーチにもいない。

ただ絶対にゴールする時には、42.2kmを終え、226kmが終わるゴールでは待っている気がした。

それでも足が動かない。

ランの途中に身体の力がふっと抜ける。

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この感覚は味わったことがない。そもそも人生で20km以上一回で走ったことがないので、ランパートだけとっても未知の領域だった。

身体が歩けと信号を出す。

それでも各エイドステーションが終わるごとに、身体の主は足を上げる。

走っているのか歩いているのか、

ただ自覚としては走っている。

確かに足は跳ねていて、速度は歩きと変わらないかもしれないが、少なくとも走っていた。

ゴールで待ってくれている彼らの顔が浮かぶとどうも歩く気にはなれなかった。

そして何とかチェナンビーチで折り返し、再び群衆の応援を受ける。

次に帰ってくるときはゴール。

次に帰ってくるときはゴールと。

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夢にまでみたアイアンマンのゲートを横目に、空港近くスタート地点MIECに戻る。

この時点で約32kmが経過。

既に2周を終え、

ラストの片道10km。

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目指すはチェナンビーチ。

そしてIRONMAN MALAYSIA のゴールゲート。

ここで。

スペシャルニーズを使う。

これはレース前から決めていたこと。スペシャルニーズとは言い換えればお助けグッズみたいなものだ。

レースの始まる前に自分で預けといてレース中に自分が欲しい時に受け取れる。

それぞれ個人個人好きな食べものを入れていて、缶詰だったり、チョコだったり、ここ一番の心の支えとして使う。

僕は最初から、このラスト10km、ラスト片道までスペシャルニーズを開けないと決めていて、そこにはチョコでも、スポーツゼリーでも、飲み物でもなく、

みんなが日本で、そして現地で書いてくれた日本の国旗の寄せ書きを入れておいた。

これを掲げてゴールしてやる。

そう描いていたことがあと10kmで実現する。この3ヶ月、「鉄人チャレンジ」という自分のわがままを支えてくれた人たち、側にいてくれた人たち、現地まで来てくれた友人、スポンサーになってくれた方々、家族。そんな人たちからのメッセージを背負ってゴールしたいなと思っていたから僕にとってスペシャルニーズの選択はこれ以外になかった。

「ABANG, SATU DUA EMPAT SATU DUA EMPAT!!」

→「おじさん!124番!124番!」と自分の番号を告げ、スペシャルニーズを急いで受け取り、旗を拡げる。

あと10km。

いったれと思いながらペースを上げる。

上がっていくペースとは裏腹に膝と腿裏に今にも攣りそうな感覚が走る。

各エイドステーションによって、自分の要求を素早く伝える。

こんな時にマレー語は便利である。

コールドスプレーを速攻でかけてもらい、再び走るを繰り返す。

辛いけど、もう終わる。

もう終わるけど、もう終わる。

もう終わるのは、寂しくないか。

ああ、辛かったけど結構楽しかったんやな自分。

そんなことばが脳内を駆け巡る。

灯が見える。

チェナンビーチのそこまで来た。

会場のテンションはここチェナン。

時刻は夜9時を回り、観客のテンションも上がるわ上がる。

そんな分厚い声援を受けながら、ラスト踏ん張る。

1人でも多く抜きたい。

これは競争で打ち負かしたいというよりは、今まで戦って来た、一緒にこの226km戦った選手達への僕ができる最大の敬意の表意であり、それは自分のもってるもの全部出し切って、一人でも多くの選手をぶち抜くことで、手加減などするわけがない。

選手たちもこの時には1つの共同体のような気持ちが芽生えており、目配せをして、

「Hey Bro 行ってこい」

みたいなことを言って道を開けて鼓舞をしてくれる人も。

最高である。

鉄人になると決めた時、

「こんなバカなレースがあって、海を越えた先で、そこにとてつもない熱量をぶつけている男たちがおるのか、かっこいいな」

と思ったことを思い出す。

彼らは本当にかっこいい。

僕もそんな一員になりたくて、最後まで、走る足を緩めない。

砂浜に出る。

ラスト200m。

音楽が鳴り響く。

観客の声と実況が入り混じり、また誰かが鉄人へとなったことがわかる。

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次は僕だ。

そんな矢先、再び「さいとう!!!さいとうさあああん!!」の声が聞こえる。

啓成と亮介である。「ゴールでみんな待ってるよ!!えみもカメラ持って待ってるよ!!」

残り100m地点。

彼らを見つけて、どうやら熱いものがこみ上げる。

人の途切れることのないゴール付近の沿道を、全ての鉄人の到着を今か今かと待っているIRONMAN MALAYSIAのゴールゲートに向けて駆け出す。

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知らない人たち、けど自然に手が伸びる。沿道の人たちにハイタッチをしながら、

そして啓成、亮介と並走しながらゴールゲートをくぐる。

「JAPAN KOHEI SAITOOO!!!」

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と実況流れるのが大きく、そしてほのかに聞こえた。

思わずではないが、意図的に日本国旗を掲げる。

今日一番、力強く手を振りきれた。

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長い長い1日で。それでいて肩の力が抜けるようなあったかいあったかい1日だった。

42.2km 4:52:32

そして、

Swim 3.8km 1:22:47

Bike 180km 7:12:16

Run 42.2km 4:53:32

Total 226km 13時間43分42秒

Rank 383位/1115人中

という思いもしなかった結果で、長旅の幕が閉じた。

---2018年11月17日。鉄人になりました。3ヶ月「鉄人チャレンジ」に関わってくださった方々本当にありがとうございました。

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そして

「IRONMAN MALAYSIA」

ランカウイの島の方々、運営の方々、沿道の応援の方々、本当に楽しい時間をありがとうございました。

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