トライアスロン初心者が3か月でアイアンマンマレーシア完走を目指す! 体験記③ バイクパート
③バイクパート
スイムを終え、よちよち走ってT1トランジションに着く。
自分の番号のバイクギア袋をと取って、更衣室に入り、海パンを脱いでバイクウェアとランニングシューズを履く。
そうなのだ。
残念ながら3ヶ月という期間の中で、バイクシューズを履いてペダリングの練習をすることが出来ずに、
本番もランカウイのバイクパートはくねくねしていて危ないから絶対やめなという、心あったかい松井さんという女性の方のアドバイスにより、
今回はランと同じのランニングシューズで挑む。ヘルメットをつけ、いざバイクパートへ。
ここでちょっと後悔したのが、バイクギア袋の中に軽く補給食を入れておけばよかったということ。
バイクに貼り付けてある補給食はやはりバイクパート中に食べたいので、ここのT1で口にするものをバイクギアの袋に入れておくといいと思う。
バイクを取り、バイクスタート地点へ向かう。
沿道に並んだ友人たちとハイタッチをしながら飛び乗る、さあいざいかんと、、、したら笛を吹かれる。
ああそうだ。まだだった。
ちゃんとスタートのラインまで手押しで進み、気を取り直してもう一度。
母にも手を振りいよいよ180kmのバイクランカウイへ。
僕が今回のIRONMAN MALAYSIAで一番懸念していたバイクパート。
なんせ一番自分でコントロールできない不確定要素が多すぎる。
特に怖かったのはバイクの故障。
この3ヶ月4本も壊れたスポーク。
前日のメカニックの人たちの反応を見る限り、スポークを治す道具はあまりないようだったので、すこし心配。
けれど藍子のお父さんからいただいたタイヤを信じて、漕ぎ進める。
また、パンクも修理キッドは持っているが、修理の仕方をあまり習得していなかったので、そこにも注意を払う。
バイクパート中おそらく全神経の40%は路上を注意深く観察することに使って走った。
ランカウイのバイクパートは道があまり良くない。
マレーシアなので覚悟の上だが、ガタガタする道が多く、出来るだけひび割れた箇所を避けつつ進む。
また歩道も整備されておらず、コンクリートの端までいくと、突然窪みがあったりする。左側走行なのだが、寄り過ぎるのはおすすめしない。
窪みにはまったら間違いなく落車してかなりの怪我をする。
バイクパート前半、雨が降る。
そしてどんどん強くなる。
最悪だと思ったのだが、今思うと午前中の日差しを避けられたという意味では幸運だったのかもしれない。
スリップしたら大ダメージを受ける恐れがあるので、下りでもスピードを40km以下に抑える。くねくねした道が多く、また車もトラックも通るので徹底して注意を払いつつ、走る。
速度は25km以下には落とさずようにしたが、あまり気にせずに抑えて走る。
1周目の30km、2周目の120km地点では山道。
これはラップ最初の山道だと思う。
ビックサンダーマウンテンのような岩岩(作り物)のトンネルを抜けて、山を登っていく。
180km通して意識したことだが、登りは頑張らない。
ギアを限界まで落とし、補給食を取りつつコツコツ上がる。
そして下りで一気にギアを上げ、駆け下りる。
これを繰り返した。(ちなみにこれは僕らのツアーに同行してくださったメカニックの岡村さんからのアドバイス)結果的に、バイクでも思ったより後半にかけてぐいぐい他の選手を追い抜くことができたので作戦功を奏したのかもしれない。
45kmを超えた時点では、雨も降り上がっていたから、下りは50kmほどで駆け下りる。
あくまで力は抜いて、いつでもブレーキを掛けられるように突き進む。
ランカウイは登りも多い分、下りがたくさんあるので特に気持ちがいい。
エイドには全て寄ることを決めていたので、バイクパートでは15km間隔に1つあるエイドステーション。1周で6個、つまり12個のエイドステーションに寄れる。
バイクパートの各エイドステーションには、
○トイレ
○水
○スポドリ
○バナナ、ジェル
○スポドリ
○水
○トイレ
○メディカル
のような順でテントがあり、本当にありがたい。
バイク故障の次に恐れていたエネルギー不足。なんたって練習でバイク180kmなど経験したこともないから未知の領域だ。
特に2週目の半分くらいまでは各エイドステーションに立ち寄り、バイクを止めて、丁寧にエイドを受け取り、バナナを食べ、受け取ったスポドリに持参のジェルを溶かし、また出発。
それを繰り返す。
1周目の60km地点あたりでランカウイ島南東のクアの街に出る。
平坦な道が続き走りやすい。
クアの大通りを進んでいくと、「2nd rap 150km」の看板が。次にここに来た時には残り<strong>30km</strong>なのかと、念頭に置き、再び大通りを走る。
何個か信号を渡り、最終的に大通りから右に曲がり、再び田舎道に戻る。
ここだ。ちょうど賑わった街並みを過ぎ、大通りを曲がった先から、ランカウイ一番の難所の坂が続く。
イメージとしては2~3個きつい登り坂が下りを挟んで続く。
1つ目の坂。
沿道に日本人の応援がいらっしゃってここで歩くわけには行かんと何とか越えていく。
なかなかきつい、筑波でのトレーニング中にすこし痛めた左膝に響く。
けどいける。
ただこの坂を終えたところで左側の前ギアの故障に気づく。
左側ギアなしで次の坂を登ると足を痛める可能性があるので次の坂は手押しで進み、下り坂を全力で駆け下りる。
バイクメカニックはいるにはいるのだが、バイクで走行していることが多く、あまり出会えないし、気にしていないと通り過ぎていってしまう。
ただメカニックがいるエイドステーションもあるので、何か問題が発生した時には聞いて見るといいと思う。
難所を超えてからバイクスタート地点付近までは走りやすい平坦な道が続く。
なんとか90kmの看板を見つけ、ようやく半分。
さて、バイクパート2周目。
2周目前半のエイドステーションでメカニックを見つける。
おお、前日壊れたスポークを直してくれたおじさんではないか。
再びの出会いにタリマカシ(マレー語でありがとう)をして、左ギアを直してもらう。
再びビックサンダーマウンテンを一超えし、ランカウイ島の東側へと向かう。
ビックサンダーマウンテンを越えたところで「2ndrap 120km」の看板。
おお、ついに2/3来たか。
あと1/3だ。
テンションが上がり、時刻を確認。この時点で<strong>バイクスタートから目測5時間ほど経過。バイク自己予測タイムが7時間半から8時間だったので、今のところ60kmを2時間半ペース。
ということは180kmで7時間半。いい感じに走れてる。
それに疲れはあるが、既に2/3を終えているのでペースは落ちない。
登り坂はコツコツ9~12km/h、下りはゴオオオと42~54km/h、平坦はおそらく27~33km/hくらいのペースで走る。
ようやく島の東側を抜けクアの大通り。
再び「2ndrap 150km」の看板を確認し、信号を曲がり、最難所の連続坂道へと続く。
この時点で足は中々悲鳴を上げていた。
特に左膝が右膝の回転に頼らないと、踏み込むのに躊躇するというレベル。
それでも決めていたことがあって。
この最難所の坂3つ。
1周目では左変速ギアの故障で1つしか登らなかったパート。
この坂を自転車のペダリングで登らずして、完走した後に自分が納得いかない気がしたので、覚悟を決める。
1つ目の坂を登る。
中々応援の方がいらっしゃって励まされつつ登る。
ここまで来るとやはり歩いている選手が多いのだが、僕は1周目で歩いたのと、自分の意地があるので止まれない。
同じく坂を登っているヨーロッパ系の青年に挨拶をすると、年齢を聞かれた。「今20歳で、もうすぐ21歳になる」というと、「wow, so u same age group with me, I’m 19, 1 year younger than u」と言われる。
だいたい同じ年代の子がとなりにおったので調子に乗って坂なのに飛ばす。
「youuu tough guy」と青年が言って来たので、「youuu toooo」と返して何とか登りきり、下りへ。
こんなやりとりで意外と元気が出たりする。
そして再び登り坂。
おそらく急な登りはこれが最後。
余力は残す程度に、ただそれでいてペダリングは止めることなく登り切る。
ランカウイ島では15kmごとに距離表示の看板があるので次の165kmの看板を探す。
1周目より少し手前で左に曲がり、ちょっと違うコースに入りしばらくすると、165kmの看板が。
もうあと15km。
こんなに長かった180kmの旅の12分の11が終わって、いよいよラストパート
この時点でバイク7時間半は切れる予測があったので(腕時計がないからあまり分からない)、ラストペースを上げる。
平坦な道でもう故障のリスクもないから、ありったけの力で漕ぐ。
ランパートに入ったら、余力がまた湧いて来る気がしたので、とりあえずバイクをやりきることにして、突き進む。
足がいうことを聞かないが、みんな辛いはずだと言い聞かせ、トランジションである空港を目指す。
たぶんこの15kmのラストスパートで相当順位が上がったと思う。
見覚えのあるIMの赤いゲート、そして空港とトランジションのMIEC。
やっと見えた。
やったで。すごく肩の荷が降りる音がした。
もうここからはランニングパート。全ての要因を基本的には自分でコントロールできる。バイクを降り、ゲートをくぐり、スタッフの方にバイクを渡す。
ふう。
バイクパート完了。
180km Time 7:12:16(7時間12分16秒)
なかなかいい。
後半の追い上げが効いたみたい。
またまた余談なのだが、ランカウイのバイクパートは本当にあったかい。
応援に来てくれた人にはなかなか会えないが、島民の人たちが結構外に出てこぞって応援してくれる。(まあランもだけど)
ローカルな雰囲気と応援に触れながら走っていくのは本当に気持ちがいいし、感謝しかない。
それと子どもがはちゃめちゃにかわいい。ハイタッチを求めて来たり、ボトルのゴミを求めて来たり(ボトルのゴミをあげるのは一応禁止らしい)。
そんなこんなでモチベーションを切らさない助けになってくれた。
さあ、いよいよ。
ラスト。
42.2kmのフルマラソンのお時間。
ランニングパートへつゞく。