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「僕はゲイをカミングアウトして、人生がガラッと変わりました」 コーチングのプロ、平山裕三さんが学生キャリア支援にかかわり続ける理由。

平山裕三さん(34)は大学3年生のときにゲイであることをカミングアウトした。「当時泣きながら伝えて初めて、自分がゲイであることに悩んでいたと気づきました」。平山さんはその告白の場にもなった「株式会社はぐくむ(https://hagukumu.co.jp/)」で現在、社員としてはたらく。はぐくむでは学生のキャリア支援にも携わり、年間500人以上の学生にコーチングをする平山さん。13年もの間、学生ひとりひとりに真摯に向き合ってきた中で、学生の顔つきが変わり、「こう生きたい」と強く歩みはじめる瞬間について語ってくれた。

 

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平山 裕三 / Yuzo Hirayama1985年生まれ。幼少期から恋愛対象が同性だと自覚。中学・高校時代は同性愛者であることを周りに言えず悩み苦しむ青春時代を過ごす。本当の自分として幸せな人生を送ることは無理だと諦めていたが、大学時代にはぐくむと出会い、ライフデザインスクールを通じて「これから自分はどう生きていきたいか?」を考え始め、「カミングアウトし、あるがままに生きていきたい」と決意する。友人や家族へのカミングアウト後、個人blogにて「僕がゲイだとカミングアウトする理由」を書き、様々な人からTwitterFacebookなどで拡散され、大きな反響を呼ぶ。大学卒業後、ソフトバンクにて法人営業を担当し、東京エリアで1位の成績を収める。また、孫正義氏の後継者を育てるソフトバンクアカデミア第1期生に選ばれ、ビジネススキルや起業家としての生き方を学ぶ。ソフトバンク退社後、はぐくむへ入社。プライベートでは山登りやキャンプなどのアウトドアが趣味。インターン生にもからかわれてしまう、イジられ&お笑い系キャラでもある。

 


■泣いて、伝えたカミングアウト

 

平山さんがゲイであることを告白したのは、大学3年生のとき。株式会社はぐくむの運営するライフデザインスクール(LDS)でのことだ。当時平山さんは、はぐくむでインターン生として関わりながら、LDSにも参加していた。

はぐくむの LDSは自分と向き合いながら、実現したい未来を描き、形にする6ヶ月間のキャリア教育スクール。2007年から始まり、今年で13年目。平山さんはその1期生。毎週のクラスを通して、自身の価値観、思考や行動パターンを見つめ直した。「何のために生き、働くのか」を学生同士が、関わり合い、疑問を投げかけ、時にはぶつかりながら追求していく。

 

幼少期から恋愛の対象が同性だと自覚していた平山さん。しかし、それまでは中高の親友、数人をのぞき、家族にすら打ち明けていなかった。その心境を、はぐくむ代表の小寺毅さんと同じLDSに通っていた10数人の仲間の前で打ち明けた。

「その時は泣きじゃくっていました。泣きながら自分がゲイであることを初めて大人数の前でカミングアウトしました」。この日をきっかけに平山さんは押し殺してきた感情と向き合いはじめる。

小学生の頃から、陽気でクラスの中でも笑いの中心的存在だった平山さん。しかし、一方で恋愛の話になると、その場から立ち去ったり、濁したり、ふとした時に誰にも共有できない寂しさを感じていた。

「ゲイであることは変えられないって分かっていたから、それを不幸だって捉えちゃうと苦しくてしょうがなかったんですよね。だからむしろ良かった、くらいにずっと思い込ませていました。でも、本当は自分が何よりもゲイであることを悲観していたんだって、言って初めて気がつきました」。(平山さん)

さらけ出せない後ろめたさを抱え、インターンのミーティングでも、心ここにあらずの状態だったこともしばしば。日常生活では、前に立って目立っていた友だちに対して皮肉を言ったりすることもあった。

カミングアウト後は、それがなくなり、生きやすくなったという。はぐくむインターンの中でもリーダー的存在になり、大学卒業まで2年間インターンを続けた。

平山さんがカミングアウトに至ったのは、LDS最後のクラスでのことだった。最後にカミングアウトできたのは、同期のLDS生が心のうちをさらけ出し、生きたい人生に向けて歩む姿に、うらやましい気持ちがあったからだという。

 

■カミングアウトした自分だから

 

大学卒業後は、ソフトバンクに入社。3年間法人営業を担当し、2011年から社員として、はぐくむではたらく。

卒業後、はぐくむに就職しなかったのはすぐに貢献できる自信がなかったことと、親からの反対が理由。ソフトバンク時代には営業で東京エリア1位の成績を収め、またソフトバンク社長、孫正義氏の後継者を育てるソフトバンクアカデミアの1期生にも選ばれた。

ソフトバンク時代も、平山さんにははぐくむに戻るという強い決意があった。「人と直接関わりながら、その人の本質を引き出したい。僕がカミングアウト後に生き方が変わったように、自分の人生を、自分の足で生きるよろこびを伝えたかったんです」と平山さんは今の仕事に対する熱意を語る。

 

■心が震える

 

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「学生たちが、心からの願いに気づいて、それを言葉にしたときのパワフルさ。その瞬間はいつも心が震えます」(平山さん)。

平山さんは13年間(うちインターン2年間)、学生たちとLDSを通して向き合ってきた。過去の経験から生まれる不安や恐れ。そこから、心が傷つくのを避け、自ら可能性に蓋をし、向き合うのをやめていく。そんな学生も多い。

「恐れていたものが外れて、こう生きていきたいと願いを言葉にした学生たちは、その前後で驚くほど顔つきが変わるんです」。本音をいうと全ての学生にLDS に参加してほしいと平山さんは続ける。

「当たり前ですけど、価値があると自信持って言えないプログラムは出せないです笑。もちろん働くことを通して社会を変えたい、誰かの役に立ちたい学生には特に勧めたいです。けれど、やっぱり世の中全体に届くといいなと思って仕事をしています」。

最後に学生へのメッセージを平山さんは答えてくれた。

「大学時代は自分から動くことが大切だと思います。何をするにしても、待ちの姿勢では機会はやってきません。僕自身、LDSという機会に自ら飛び込んで、あの時自分をオープンにする決断をしていなかったら今の僕はいません。自ら成長する機会に飛び込むこと。機会に対しオープンに生きる決断をすること。それを大事にしてほしいなって思います」。

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株式会社はぐくむの運営するライフデザインスクール(LDS)。写真は2019年、東京17期のクラス。LDSは今年で13年目だ。

 


■おわりに

 

ご無沙汰しています、筆者サイトウです。

だいぶ間が空きました。

実はこのインタビューしたの夏なんです。

もう金木犀も散りました。申し訳ないです。

今回は、平山裕三さんにインタビューさせていただきました。

僕らは普段、"ぐっちさん"という愛称で呼ばせてもらってます。

なので以下ぐっちさんでいきます。

語ったら尽きないのですが、僕自身LDSの17期生としてぐっちさんに大変お世話になりました。

悩んでいたり、見栄を張っていたりするとすぐに見透かされ、

すごく優しく、それでいて直球に、背中を押してくれるぐっちさんに何度も助けられました。

ぐっちさんの人柄やLDSという空間。

今回はそんなことについて書く機会をもらってとても嬉しいです。

ですが、僕の文章ではまだまだ伝わらないことがたくさんあると思います。もし何か聞きたいことがありましたら、筆者サイトウまで何でも聞いてください。

最後にライフデザインスクール(LDS)のリンクを載せておくので、興味のある方はご覧ください。

http://www.hagukumu.co.jp/lds/index.html ライフデザインスクール(LDS)

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平山裕三さんと筆者サイトウ

取材・文:齊藤滉平(筑波大学生物資源学類3年)

写真: 平山さんから借用

筆者Facebook:https://www.facebook.com/koheisaito29

筆者Twitter:http://twitter.com/kohei__saito