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ウガンダから筑波大学へ。「ガンの研究者になりたい」そして日本人に伝えたい友情の在り方とは

「ガンの研究者になりたい。」

ウガンダ🇺🇬からの留学生アネット・ナカジ(Nakkazi Annet)さんはいう。

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アネット・ナカジさん(Nakkazi Annet)-Uganda(筑波大3年)

初めて会ったのは、1年半前。

右も左も英語も分からなかった僕にとって彼女との出会いは新鮮だった。

アフリカの衣装に身を包み、豪快さと気品さを合わせもつ彼女はそのはちきれんばかりのエネルギーを片手に大学の食堂でブイブイ踊っていた。

そんな陽気な性格の彼女だが、勉強に対しては誰よりも真剣に、それでいて楽しそうに熱中している姿を校内でよく見かける。

今回はそんな彼女の、 ”研究に対する熱意” そして日本人の学生に伝えたい "友情の在り方" を聞いてきた。

 

 ■アネット・ナカジ

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アネット・ナカジさん(23)は現在筑波大学生物学類の3年生。

アフリカ大陸東、ナイル川の源泉ヴィクトリア湖を囲む国の1つであるウガンダ。 

その中央南、マサカ県に生まれる(首都はカンパラ)。

祖母の下で育った彼女は、小中高とウガンダの国立学校に通う中で、幼いころから教育の大切さを知る。

---「教育と自律心ほど大切なものはない。教育を通して世の中、人生に対する知見を広げることができる。またこころと身体の健康を維持することの大切さを理解することができる。自己を律し、社会の中の一員として生きることで、自身の存在意義を見出す事ができる。」

しかし、その一方彼女の育った環境は教育を受ける点において、恵まれていたわけではなく、お金の問題により、2度の転校を余儀なくされる。

それでも熱心に勉学に励み、高校卒業後、教師として勤務した後、筑波大学(G30プログラム)に成績優秀者として、進学する。

そして、現在は筑波大学生物学類3年次に所属し、ガン細胞の研究に励んでいる。

 

■ガンの研究者になる

 

---「ウガンダではガンになることは死ぬということ。」

アネットさんは言う。

---「ウガンダのガンは日本と違った面を持っている。主な原因は2つ。栄養不足と汚い環境での暮らし。旧型自動車の容赦ない排気ガス、工場の煙、汚染された水。そういった中で暮らしている私たちは無意識のうちに有毒物質を取り込み、それは細胞の変異を引き起こし、ガン細胞への転換につながる。

そして、ウガンダの問題はガンになった後、医療費を誰も払うことができないこと。にもかかわらず、ガンに対する予防や治療等の知識が人々に教育されていないこと。」

アネットさんが研究しているテーマは

[ミトコンドリアDNAの変異と炎症細胞の関連性(How do Mitochondrial DNA links to Inframmation cells)]

ガン細胞の臓器間の転移には炎症細胞の助けが必要であり、炎症細胞中に含まれるMint3と呼ばれる分子が「ガン細胞の転移を促進することが知られている。(「炎症細胞によるがん転移性ニッチ形成メカニズムを解明」東京大学坂本助教授 2017年より)

http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/files/170519.pdf

 

アネットさんが現在行っている研究では、ガンの転移を引き起こすとされる炎症細胞発生のメカニズムを突き詰めること。そこにはミトコンドリアDNAの変異が関係するとされているのだが、そのプロセスは明らかになっていない。もし、これが特定出来たら、炎症細胞発生そのものを防ぐ治療薬の開発、そしてガン発生を防ぐことにもつながる。

---「将来はガン細胞の研究者になる。効果的で低価格のガン予防薬の開発に携わり、技術をウガンダに持ち帰りたい。一人でも多くのウガンダの人を救いたい。そして、その治療法が世界にも広がったら嬉しい。」

 

■日本の学生に伝えたい「友情」の意味

 

---「Hi, How are you doing?」

---「小さな挨拶が何よりも大きな意味を持つの。」

ここから打って変わり友情の話。

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---「おいしい食べ物がいつでも手に入り、安全で便利な日本が好きだ。」

けど、一つ伝えたいことがあると彼女は言う。日本人の友情に対する捉え方である。

ここではアネットさんの友情の価値観に触れてみたい。

 
ご近所さんを知ろうとしてください。

 

---「日本ならご近所さんとつながりを持たなくても、周りで暮らしている人を知らなくても生きていける。

確かにそう。

けど考えてみて。その人の助けが必要な日が来るかもしれない。

時間がない。面倒くさい。分かるよ。

けど、"Hi How are you??" と聞くのはそんなに時間をとる?

ご近所さんを知るって、家に招待しなければとか、お出かけしなければとかそんなことじゃない。

一言の挨拶。

小さな挨拶が何よりも大きな意味を持つの。

外に目を向けて、周りを見てほしい。

その人に何かあったとき、あなたはだれよりも早く助けになることができる。

逆にあなたに何か起きた時、その人はだれよりも、警察よりも、家族よりも、クラスメイトよりも早く助けてくれる可能性があるのよ。」

 
友人の意味はなに?

 

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---「友人があなたを必要としていて、あなたがその人を助けた時、それを友人と呼ぶの。だってあなたはそこに居て、力になったのだから。どんな状況でも、楽しい、辛いときに関わらず、そこに居たのだから。」

友人はパーティの時だけ存在するのではないと彼女は続ける。

---「"Friends in a need is a Friends indeed"(まさかの時の友こそ真の友)」---「日本では、人に迷惑をかけるなって言われて育つことが多いと思う。実際、私の友人の日本人も"私なら大丈夫、Stand by myselfできる、心配しないで"っていうことが多いよ。

日本は"もの"に溢れていて安全で、一人でも生きていける。

けど、その"もの"って何?何のためにあるの?

周りに困っている友人がいて。

その"もの"を貸しては、借りてはいけない。迷惑かけられたくないってしていて、最終的に何が残るの?

手を差し伸べないこと、厄介なことを全て避けて生きることもできる。けど、できる限り、差し伸べて。

あなたは明日どうなっているの?

明日もだれからの助けも必要とせず、一人で立てると言えるの?人生は思っているより短いよ。」

---「いつかだれも傍に頼れる人がいないときが来るかもしれない。(time will come when you don’t have anyone)」

---「そのとき一人なら、それはあなたが他人に投資をしてこなかった結果。そのとき、周りに"もの"があってもそれは一体何を為すの。

私たちはみんな、だれか必要で。私もだれかが必要で、だれかも私を必要なの。傍にいてくれる人を大切に。一人は大変だよ。いつか助けが必要な日が来て、その時あなたには傍で支えてくれる人がいるから。」

 

■おわりに

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アネットさんと筆者サイトウ

サイトウです。

今回はアネットのことを知っていたつもりで知らなかったと強く感じました。

どうも、僕らも最初は「"Hi, How are you"」から始まったわけなのですが

いつの間にか、仲良くなっていてああ、アネットにしてやられたなあと。

ただそうやって、色んなところに友情の輪が広がっていくのは素敵だとアネットのインタビューを通して考えさせられました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それではハクナマタタ。

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取材・文:齊藤滉平(筑波大学生物資源学類3年)

写真:アネットさんから借用、齊藤滉平

筆者Twitter: http://twitter.com/kohei__saito筆者Facebook:https://www.facebook.com/koheisaito29